奥の細道・序文を改訂

バ―ジョンアップ

「奥の細道・序文の朗読記事」をバージョンアップしました。ボランティアにより公開された朗読を使わせていただいていましたが、このたび、朗読参照として明示しました。その他、細かな箇所が改訂されています。

吟遊詩人

吟遊詩人と言えば、中世ヨーロッパにおける高貴な宮廷婦人の恋愛を歌った抒情詩人を思い浮かべますが、芭蕉の句に『蚤虱(のみしらみ) 馬(うま)の尿(ばり)する 枕(まくら)もと』があります。花鳥風月を慈しんだ素朴な歌人の人柄がしのばれます。

奥の細道・序文の朗読

つき百代はくたい過客かかくにして、きかふとし又旅人也またたびびとなりふねうえ生涯しょうがいをうかべ、うまくちとらえておいをむかふるものは、たびにしてたびすみかとす。古人こじんおおたびせるあり。
もいづれのとしよりか、片雲へんうんかぜにさそはれて、漂泊ひょうはくおもひやまず、海浜かいひんにさすらへ、去年こぞあき江上こうしょう破屋はおくくも古巣ふるすをはらひて、
ややとしくれ春立はるたてかすみそら白河しらかわせきこえんと、そぞろがみものにつきてこころをくるはせ、道祖神どうそじんまねきにあひて、とるものにつかず。
ももひきやぶれをつづり、かさつけかえて、三里さんりきゅうすゆるより、松島まつしま月先心つきまずこころにかかりて、すめかたひとゆずり、杉風さんぷう別墅べっしょうつるに、
 くさ住替すみかわぞひなのいえ
面八句おもてはちくいおりはしらにかけく。
芭蕉     曽良
©TacM,2017 Ver0.03
 月日は永遠に旅を続ける旅人であり、来ては去り、去っては来る年もまた同じように旅人である。船頭として船の上に生涯を浮かべ、馬子として馬のくつわを引いて老いを迎える者は、毎日旅をして旅をすみかとしている。古人の中には旅の途中で命を無くした風流人が多くいる。
 私もいつの年からか、ちぎれ雲が風に吹かれて漂うように誘惑されて、旅に出て歩きたい気持ちが我慢できず、海や浜辺をさすらい、去年の秋、隅田川の畔を破れ小屋において蜘蛛の巣を取り払って暮らしているうちに、次第にその年も暮れ、春になり霞(かすみ)が立ち込める空を見るにつけても、あの名高い白河の関を越えようと、人の心をそわそわさせる神が取り付いて私の心を狂わせ、道祖神が招くような気がして取るものも手につかない。
 旅行着の破れ目を直し、笠の紐(ひも)を付け替えて、足に灸をすえると、あの有名な松島の月の美しさが真っ先に気にかかって、住んでいる家は他人に売り、杉風の別宅に引越しする時に、句を詠んだ。「草の戸も」の句を発句とする連句の初めの8句を草庵の柱に掛けておく。(現代語訳)

 

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