日別アーカイブ: 2019-06-16

心の安寧

物質文化の亡霊

最近、老後の生き方で投資などの運用が薦められています。

国の予算がひっ迫してタンス預金をなんとか吐き出させたいという魂胆が見え隠れします。専門知識のないものが手を出してもやけどをすることがあります。

海外旅行やお金のかかる趣味をするにはそれなりの準備が必要です。現役を退いてからまとまった金額を要する楽しみはなかなか難しいと思われます。

 

かつては仕事をもっていると長期の休みを取るのは気が引けたものでしたが、今は官民をあげて有給休暇の消化が推奨されています。力があるうちに海外旅行などを経験し視野を広めることが大切でしょう。子育て、出世、評判などすべてを好転させる目論見は欲深いです。ある程度の開き直りが必要です。

青雲の志

ひと頃は「お金を稼いで故郷に錦を飾る」ような美談が尊ばれていましたが今では似合いません。

高級車を手に入れ高層の白亜の屋敷に住むのが夢でした。少子化になり青雲の志を抱いて故郷を出るという気概は必要ありません。

都市と地方の差が縮まっているからでしょうか。今では映画のロードショーは全国一斉封切ですが、かつて地方は都市部より半年遅れなど当たり前でした。石川啄木が詠った故郷は遠くになりました。

「故郷は遠きにありて想うもの」は今でも変わりありませんが、その土地に腰を下ろした人々が故郷を守ってくれるでしょう。

故郷を出た人間はひたすら自分の道をまい進すればよいのです。そうすれば、ギターひとつで故郷を後にした若者が武道館を満員にしていることを知り、「不良」「役者くずれ」などと好奇の目で見ていた人たちが近づいてきます。

全国的な有名人が生まれれば故郷の歴史はテレビ局の番組が大枚の予算をかけて制作し、ふるさと創生に貢献してくれます。物や精神的な文化など地方では得られないと思ったら都市に出て手に入れる習わしが定着しています。

老後資金は若いときに準備するもの

国のリーダーは高齢になったら現役時代に積み上げた年金で賄い、若い世代に頼らないでやりくりするように喧伝していたように思います。

突然、それでは不十分ですと今頃いわれても遅すぎます。一律に2000万円必要と言われるのは心外です。

ネットサーフィンで世界中の今を手に入れたり、図書館の本を借りたり、無料の催し物に出かけるのもひとつの試みです。

高校生の音楽発表会は立派なホールにてそこそこのレベルの演奏を無料で鑑賞できます。

また、図書館は古典落語、著名なシンセサイザー奏者によるシルクロードのテーマなどのCDをたくさん保有しています。

好みのジャンルから気に入ったものを借りて、小予算で色あせることのない文化に触れることができます。

四十(しじゅう)にして惑わず

孔子が「論語」のなかで晩年に振り返って言ったことばがあります。100年時代の現在、当時の40歳は今の70歳くらいに相当するでしょうか。『十五才で学問を志し、三十才で学問の基礎ができて自立でき、四十才になり迷うことがなくなった。五十才には天から与えられた使命を知り、六十才で人のことばに素直に耳を傾けることができるようになり、七十才で思うままに生きても人の道から外れるようなことはなくなった』と述懐しています。

凡人はなかなか、このように悟りきれず、ものが見えなくなれば周りの者に盗まれたとわめきちらし、知人が出世すれば穏やかさを失い嫉妬し、自分の伸びしろがなくなったぶん、子供や孫自慢に明け暮れます。

自慢話も一度は聞いてくれますが二度三度となると嫌がられます。子や孫の自慢材料の乏しい人は近所や町内会の知人、小中学時代の同級生まで広げます。

ただで自慢話をするのはマナー違反であることを知らない人は幸せです。

本来、他人が酒を食らい惰眠をむさぼって怠惰な生活をおくっているとき、艱難辛苦して成功した話を吹聴するのは悪くないことですが孫自慢よりは顰蹙度(ひんしゅくど)が大きいとされています。かなりたたかれます。

他人の自慢話は聞きたくないが自ら発するのは平気とは人間の業(ごう)、執着、情念に基づくしわざでしょうか。

「女房妬くほど亭主もてもせず」「隣の芝生は青い」と心配事はキリがありません。暇があり過ぎるとあらぬ方向に向かうので趣味や教養講座への入門、ボランティア活動への参加などいかがでしょうか。

他人の生活を穿鑿(せんさく)してもなにも始まりません。人は人、心の安寧を求めて論語の研究もそのひとつです。