ものごとは生きている
研究が進んだり、新しい埋蔵物が発見されて歴史的な認識が変更されることがあります。また、他国との付き合い方が変わって名前や地名の変更が生じています。
鎌倉幕府の成立は1192年とされていましたが、征夷大将軍に任命された年よりも幕府としての体制が確立した1185年を幕府成立年とする考え方が多くなってきています。
変化例
古い映画の再放送では、『人権に配慮して削除すべき用語が使用されていますが、作者の意思を尊重してそのまま、放送しています。』とのことわりが出ます。松本清張の映画で《洗濯屋の小僧》という言葉が使われていましたが、これなどは差別用語に相当します。今はクリーニング店従業員と呼んでいます。
以下に似た変化例を示しますがあて馬について説明を加えます。あて馬とは、繁殖用メス馬の前にスタイルの良いオス馬をあてがい、メス馬がその気になったら、血統の良いオス馬と交替の役割をする発情を促すだけのオス馬のことを言います。
最近、プロ野球で予告ピッチャールールが施行されたので、あて馬や偵察要員という言葉は使われなくなりました。野球でいうあて馬とは、当日の試合でどのようなピッチャーが出るかわからないので、前日に登板したばかりの投手などをバッターとして登録して先発ピッチャーが明らかなになった折りに、適切な選手と交替するための仮の選手を言います。
旧名 | 新名 | 変更理由 |
ジンギスカン | チンギスハーン | よりモンゴル語に近い発音 |
リーガン大統領 | レーガン大統領 | より原語に近い発音 |
金大中(きんだいちゅう) | キムデジュン | 人名の発音に関する相互主義(韓国)※ |
魯迅(ルーシュン) | ろじん | 人名の発音に関する相互主義(中国)※ |
風俗店 | 飲食店 | 風俗店火事の死者にムチ打たず |
浮浪者・アーバンジプシー | ホームレス | 差別用語 |
坊主 | 修行僧・住職 | 尊敬を込める |
情婦 | 愛人 | すべての人の人権尊重 |
父兄会 | 父母会 | より実情に合った呼び名 |
掃除婦 | モップレディ | 人材不足 |
婿 | マスオさん | サザエさんのマンガから |
やり手ババア | 老獪女性経営者 | 差別的 |
小使いさん・用務員 | 校務員 | 差別用語 |
下女(げじょ)・女中 | お手伝いさん | 差別用語 |
下請け会社 | 協力会社 | 媚びた用語 |
ガキ | 坊ちゃん・お子様 | 児童憲章、媚びた用語 |
カムチャッカ | カムチャツカ | より原語に近い発音 |
インシュリン | インスリン | より原語に近い発音 |
バセドウ氏病 | バセドウ病 | 発見者の尊称を削除 |
見習い | 研修生 | 人材不足 |
当て馬 | 偵察要員 | 卑猥で差別的 |
くるくるパー | —– | 患者や病名を連想させるので使用自粛 |
下男(げなん・しもおとこ) | 従業員 | 差別用語 |
寺男(てらおとこ) | 修行僧 | 差別用語 |
デブ | ふくよか女性 | 女性尊重 |
連れ込み旅館 | ラブホテル | 明るいイメージ |
畜生 | 家畜・ペット | 動物愛護精神 |
宮城(きゅうじょう) | 皇居 | 昭和23年、改名 |
—– | 非常点滅表示燈 | 昔、ハザードランプはなかった |
※人名の発音で中国では、わが国と同様に日本人名漢字を中国語読みしています。これを相互主義と言っています。相互主義だから毛沢東(モウタクトウ)と呼んでも失礼に当たりませんが、韓国ではこの方式を採用していません。
自国で呼んでいるように発音するのが基本です。その意味では吉田茂はYoshida Shigeruと呼んでもらうのが自然なのではないでしょうか。過剰な欧米崇拝の一面でしょうか。
再教育
車の免許を取っても運転せず、更新し続ける人々をペーパードライバーと呼びます。そして、本格的な運転を再開する場合、再び自動車教習所に通うことがあります。
この他にもパソコンに触れる機会が少ない高齢者のために、再教育する一環として《老人大学》などのセミナー講座が開かれます。
上に示したように、物事への見方は変わり、古い知識を更新する必要があります。新しいことを始めるのだから、講座名は『老人幼稚園』が適切な呼称と思われますが、その名では参加者はないでしょう。
集まりが悪いと企画者の責任になります。公的な資金による無料講座も参加人数が気にかかります。そのため、カタカナの採用が多くなります。
講座名は『ナレッジリニューアルセミナー』でいかがでしょう。
終わりに
呼び名は、人権尊重等の理由で変更されることがありますが、実質的な裏付けなしに名前だけがインフレ化し度を超すものもあります。
文豪、巨匠、マエストロ、大御所、画伯、師匠、名人、達人などの代わりにカリスマという言葉が飛び交ったことがありました。
名誉的な表現(モップレディ、協力会社、研修生など)の代償に実勢を削る知恵者がいます。見かけだけの評価には気を付けましょう。
おまけに
左折灯を点灯させて路肩に停車している運転者はかなりの高齢者(おじん、おばん)ばかりです。
今、65歳を超えている人が免許を取ろうとして教習所に通っている頃、車にハザードランプは付いていませんでした。
駐停車を知らせるには、ごく普通に左折灯をつけていましたが、今はハザードランプの方が適切です。本来ならば、再教育が必要な事柄です。