即位礼正殿の儀によせて
令和の誕生を祝って、雅な和風調雰囲気のなか『梅花の宴』をお楽しみください。祝日・即位礼正殿の儀10月22日(火)には間に合いませんでした。11月10日(木)の天皇即位パレード《祝賀御列の儀》にまた想い起してください。
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梅花の宴・即位礼正殿の儀によせて
「万葉集 巻五-八一五 梅花の歌」の序文
天平二年正月十三日に、
帥老の
宅に
萃まりて、宴会を
申べたり。
時に、
初春の
令月にして、気
淑く風
和ぐ。
梅は
鏡前の
粉を
披き、
蘭は
珮後の
香を薫らす。
加以、
曙の
嶺に
雲移り、
松は
羅を掛けて
蓋を
傾け、
夕の
岫に霧結び、
鳥は
穀に
封ぢられて林に
迷ふ。庭に新蝶舞ひ、空には
古雁帰る。
ここに、天を
蓋にし
地を
坐にし、膝を
促け
觴を飛ばす。
言を一室の
裏に忘れ、
衿を
煙霞の外に開く。
淡然に
自ら
放
し、
快然に自ずから足りぬ。
もし
翰苑にあらずは、何を以ってか
情をのべむ。
請はくは落梅の篇を
紀せ、古と今と
夫れ何か異ならむ。
園梅を賦して、
聊かに短詠を成すべし。
【口語訳-解説】 富田敏子氏作品参照
天平二年正月十三日、太宰帥・旅人卿の邸宅に集まり、宴会を開いた。ちょうど初春正月の佳い月で、風は快く穏やか。梅花は化粧鏡前の白粉のように白く、蘭は匂い袋のように香る。それだけでなく、夜明けの峰に雲がかかり、松は雲のうす衣と天蓋をさしかけ、夕べの嶺には霧がかかり、鳥は霧に封じ込められ林をさ迷う。庭には春生まれた蝶が舞い、空には雁が南に帰る。
そこで天を蓋にし、地を座敷に、悠然とお互い膝を近づけ酒杯をくみ交わす。一同は言葉も忘れ、襟もゆったり外気に向けてくつろぐ。こだわらず気ままに振舞い、皆が快く満ち足りている。
もし文筆によらないなら、何をもって心中を述べることができるだろう。落梅の歌を詠んでほしい、唐の昔も今もその心は違わない。苑の梅の風情を思い、おのおの歌を作ってくれ。
余禄・天蓋について
天蓋(てんがい)という言葉があります。
①仏像などの上にかざされる傘状の仏具
②虚無僧が被る深編み笠
③貴人にさしかける長い柄がついた傘
の意味があります。ここでは三番目の意味が適切のようです。図にすれば右図のようなものと思われます。